犬のシニア科

犬のシニア科

シニア科

人間同様、年を重ねると様々な変化がでてきます。その変化を把握し、愛犬と飼い主様のかけがえのない時間を少しでも長く健やかに楽しむことができるようお手伝いしております。

その子の状態に合わせて適切なアドバイスを行います。また、高齢犬では関節痛がつきものです。栄養バランス、お薬、サプリメント、レーザー治療、鍼灸など様々なご提案をさせていただきます。シニアになるほど、病気にかかりやすくなります。病気の早期発見のため、定期的な健康診断の受診をお勧めしています。

なお、当院でのワンちゃんの診察の割合のうち、10歳以上の老犬・高齢犬が46.5%と高い割合をしめています。 負担の少ない検査・治療・手術を行いますのでお気軽にご相談ください。

人間との比較

犬は人の約4倍の早さで年をとります。私たち人間が1年に1回受ける健康診断も、人間の年齢に換算すると1年で4~8歳も年をとる犬ではそれでは不十分です。わずかな不調のサインにも早く気づいてあげるために1年に2回は健康診断を受けて健康管理をすることをおすすめします。 当院では10歳以上の老犬・高齢犬のための健康診断のプランをご用意しております。 詳しくは健康診断のご案内をご覧ください。

身体の変化

歩き方の変化

・ふらつく、ものによくぶつかる
・足を引きずる
・下半身が動かない
・段差が上がれない
・スムーズに立ち上がれない

行動・様子の変化

・ぐったりして元気がない
・落ち着きがない
・飼い主が認識できない
・咳をする
・息切れ、呼吸困難を起こす

睡眠の変化

・なかなか眠らない
・夜鳴きをする
・昼寝の時間が長い
・夜の睡眠時間が異常に短い
・睡眠中触れても反応しない

食生活の変化

・食欲がない
・異常に食べるようになる
・水を異常に飲む
・水を飲まなくなる
・食べ物の好みが変わる

※以上のような変化や、その他、体や行動の変化が猫にみられたら、早めに獣医師にご相談ください。 病気を事前に防ぐには、体が訴える小さなサインを見落とさないことが重要です。

治療例

腫瘍

腫瘍にはゆっくり増殖して他の器官などには転移しない良性腫瘍と、一気に増殖し他の器官に転移する悪性腫瘍(ガン)があります。犬に多いのは、乳腺腫瘍、皮膚腫瘍、口腔の腫瘍、肛門周囲腺腫、骨腫瘍、悪性リンパ腫等です。

主な症状
【乳腺腫瘍】しこり・乳汁・乳腺付近の赤み、腫れ
【皮膚腫瘍】いぼ・しこり・こぶのような隆起物
【口腔内腫瘍】しこり・出血・口臭・よだれ・びらん・食べづらそうにする
【肛門周囲腺種】肛門のまわりの硬いしこり、出血、化膿、潰瘍
【骨腫瘍】歩行異常・骨、関節部の腫れ、痛み
【悪性リンパ腫】リンパ節の腫れ・食欲低下・元気がない

治療
腫瘍を良性か悪性かを確定診断するためには手術で摘出したものを病理検査に出す必要があります。年齢や状態にもよりますが、手術が必要な場合は可能な限り当院で手術を行います。肺など難しい部位の場合は大学病院をご紹介しております。手術と合わせて抗がん剤による治療を実施することもあります。リンパ腫など一部のガンは抗がん剤がよく効くため、手術をせずに抗がん剤で治療することもあります。 放射線療法が必要な場合は大学病院をご紹介いたします。ただし年齢や状態によって、そういった積極的治療を望まれない飼い主様もいらっしゃいます。当院では飼い主様のご希望に沿えるように、手術や抗がん剤を行わない場合でも、なるべくよい時間を過ごせるように飼い主様と一緒に考えていきます。

僧帽弁閉鎖不全症

心臓の中にある僧帽弁が変性により肥厚することや、腱索と呼ばれる支えが切れることで、僧房弁がしっかり閉じなくなる病気です。主に老犬・高齢犬に多くみられますが、遺伝的に心臓が弱いキャバリア、マルチーズなどの好発犬種では若いうちからみられることがあります。

主な症状
呼吸困難・咳・疲れやすい・運動を嫌がる・酸欠・卒倒・心雑音・心肥大
肺水腫を起こすと死に至ります。

治療
軽い心雑音など初期症状の場合は定期検査をしながら経過観察します。心肥大が見られてきたらACE阻害薬と呼ばれる血管拡張薬を投薬します。さらに進行した場合は強心薬や利尿薬を併用します。

腎不全

腎臓の機能障害により体内の老廃物の排泄や水分・電解質バランスの調節などに異常が生じます。10歳以上の老犬・高齢犬にしばしばみられます。まれに先天的な奇形などにより若くても腎不全を発症することがあります。

主な症状
【急性腎不全】急激な尿量の減少・尿閉・食欲不振・嘔吐
【慢性腎不全】多飲多尿・食欲不振・体重減少

治療
腎臓は一度壊れてしまうと再生しない臓器の一つです。急性腎不全では回復することがありますが、慢性に移行すると治りません。人間では腎移植や透析を行いますが、動物では難しいです。そのため慢性腎不全になった場合は対症療法が主体になります。具体的には、腎臓用の療法食(低たんぱく食)、活性炭・リン吸着剤の投与、腎臓の血圧を調整する薬、そして輸液です。輸液に関して静脈点滴は長期間行うことが難しいため、当院では皮下輸液を行っております。腎不全では主に血液中の尿素(BUN)が上昇することで食欲不振を起こすことが問題なので、食欲が落ちたときや脱水がひどいときに輸液を行って水分を増やしてあげると一時的に調子が回復することが多いです。ただしあくまでも対症療法で効果はあまり長くないので、症状に合わせて繰り返し輸液を行う必要があります。

甲状腺機能低下症

甲状腺の働きの異常により、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。

主な症状
活動性の低下、代謝の低下、被毛の減少、毛が生え変わらない、皮膚炎

治療
甲状腺は体の代謝を促すホルモンなので、低下すると元気がなくなり、皮膚や毛の生え変わりが悪くなって、古い毛が残ってごわごわし、薄毛や脱毛がみられます。皮膚が弱くなるので皮膚炎を起こすこともあります。
検査は血液検査で行います。明らかな低下がみられた場合は甲状腺ホルモン製剤を投与します

認知症

15歳を超えた老犬・高齢犬にみられます。日本犬やその雑種に比較的多くみられます。

主な症状
症状は人間の認知症と似ており、物忘れや徘徊、夜鳴き、昼夜逆転などがみられます。 治療 残念ながら特効薬はありません。しかし、EPAやDHAなどの脂肪酸(魚油に多く含まれる)のサプリメントをしばらく与えると改善することがあります。 アンチノールというサプリメントがおすすめです。

健康診断

10歳以上になるとさまざまな体の変化と同時に病気のリスクも高まります。そのため、それまでの健康診断の内容ではカバーしきれず、見落として未然に防ぐことが出来ない場合があります。当院では年齢にあった健康診断をおすすめしています。高齢犬では年に2回のッ受診をお勧めしています。
様々な血液検査やドッグドック(レントゲン検査、腹部超音波検査)を実施しています。春と秋にお得な健康診断キャンペーンをご用意していますので、そちらもご活用ください。

デイケア

当院では移動が困難な老犬・高齢犬でも安心して、預けていただくことができるよう送迎サービスを行っております。

・預けたいが運ぶことができない
・出かける必要があるが、預けるのが不安
・リフレッシュしたい

介護が必要な老犬の飼主様の多くが抱えるお悩みです。そういったお悩みを持つ飼い主様をサポートするサービスです。獣医師と看護師がすぐに対応できる体制をとっておりますので、安心してご利用ください。お電話にてお問い合わせください。

レーザー治療器

当院ではレーザー治療器を導入しています。レーザー治療器は痛みや出血の少ない手術や局所麻酔でのしこり取り、腰痛などの痛みを緩和する治療、傷の治りを早める創傷治療、歯肉炎や口内炎の治療などに使用できます。高齢で全身の麻酔をかけることが難しい場合のしこりの治療など、ご相談ください(適応できない場合もあります)。また痛みの緩和治療は10分2,200円~お受けしています(診察料が別途かかります)。

老犬・高齢犬のQ&A

Q
食欲不振がみられるときはどうしたらいいですか。
A
老犬・高齢犬の食欲不振はよくみられる症状です。若いころに比べると食べる量が減り、胃腸の機能も弱ってきます。

高たんぱくな食事は腎臓の負担に、高塩分の食事は心臓の負担になります。食べないからといってむやみにおいしいものを与えると、ドッグフードを食べなくなってしまいます。なるべく信頼のおけるメーカーのドライフードを中心に、消化のいいものを食べさせましょう。ジャーキーなどの干物や牛皮のガムは固すぎるので消化が悪いです。歯が悪い場合はフードをふやかすのも方法です。残す場合は与えている量が適切か病院で計算してもらいましょう。

水分はしっかり摂った方がいいですが、心臓に疾患がある場合は飲み過ぎると負担になるので病院に相談しましょう。心不全、肝不全、腎不全、糖尿病などの疾患がある場合は療法食を食べさせた方がいいので、病院に相談しましょう。1日以上食べない場合は病気の可能性があるのであまり長く様子をみず、診察を受けましょう。

Q
老犬・高齢犬にお勧めのドッグフードは?
A
療法食を作っているメーカーは栄養学的なデータと実績を豊富に持っているので信頼ができます。日本で療法食を販売しているメーカーは、ヒルズ、ロイヤルカナン、アイムスなどです。療法食を作っているメーカーが販売しているシニア向けのフードが無難な選択です。病気がある場合は症状に合わせた療法食が必要になります。

究極的には手作り食が一番いいですが、手作り食でバランスを取るには専門家のアドバイスが必要になります。不用意に手作り食だけを与えると、栄養の過不足が起こります。ネットではトウモロコシ、小麦などの穀類は犬に不必要で入っていない方がいいという意見から、グレインフリー(穀物が入っていない)のフードが流行っていますが、品質は良いものの、バランスの悪いものが多く、使い方を誤るとかえって健康を害します。確かに穀物アレルギーの犬はいますが、それほど多いわけではなく、食物アレルギーの場合は原材料を選択すればいい話で、グレインフリーにこだわるよりも栄養のバランスに気を付けたほうがいいと思います。

おやつを与える場合は食事量の10%以下にしてください。ジャーキーなどの固いおやつは消化が悪いのであまり与えないようにしてください。

Q
老犬・高齢犬にお勧めのサプリメントは?
A
アンチノールというサプリメントがお勧めです。モエギイガイという貝から採れた脂肪酸のサプリメントで、皮膚や血管、関節にいいとうたわれています。サプリメントである以上はっきりとした効能はありませんが、個人的な感触としては関節痛や皮膚炎をやわらげるのではないかと思います。認知症にもいいかもしれません。

Q
老犬・高齢犬のお散歩はどうしたらいいですか?
A
老犬・高齢犬は関節や脊椎が悪くなっていることが多く、筋肉量も低下してくるので、若いころに比べると運動が苦手になってきます。飛んだり跳ねたり、上り下りする運動は背骨を傷めやすいので控えましょう。

関節痛があると跛行することがあり、歩きたがらないことがあります。そのようなときは無理をせず診察を受けて痛み止めや関節のサプリメントなどを飲ませましょう。嫌がるからといって全く散歩をやめてしまうと筋肉が落ちてしまいます。長く歩かなくてもいいので、滑りにくい場所でゆっくり歩かせましょう。腰が立たなくなって来たら、腰を持ち上げるハーネスなどでサポートしてあげるのも方法です。家の中では歩くけれど、外に出ると全く歩かなくなってしまったという場合は、目が見えなくなっていることがありますので診察を受けましょう。